相続の話題になるとよく耳にする「法定相続分」。
これは、被相続人が遺言を残していなかったり、相続人間の話し合いがまとまらない場合に、法律で定められた割合で財産を分割する基準です。
しかし、この法定相続分は、必ずしも相続の場で用いられるとは限りません。
家族で話し合いがまとまれば法定相続分は不要
法定相続分(民法第900条)は、相続人が各々どれくらいの割合で財産を受け取る権利を持つかを示したルールです。ただし、家族間で話し合いが成立していれば、このルールに縛られる必要はありません。
例えば、不動産を長男が相続し、次男や三男が現金を受け取るといった柔軟な分割方法も可能です。
重要なのは、相続人全員が納得する形で協議が成立することです。家族間で円満に話し合いが進む場合、法律に定められた割合に基づいて分割する必要はありません。
遺言書があれば被相続人の意思が最優先
遺言書がある場合、被相続人が自身の財産をどのように分配したいかが記載されています。この場合も、法定相続分は基本的に用いられません。
遺言書は、家族間のトラブルを避けるための強力な手段でもあります。
ただし、遺言書がある場合でも、相続人の「遺留分」が侵害されているケースでは問題が生じることがあります。これについては後述します。
揉めた場合や合意が得られない場合の「最後の基準」
一方で、家族間での話し合いが不調に終わった場合や、意見が対立して調整が難しい場合には、法定相続分が最終的な基準となります。裁判所での調停や審判では、民法第900条に基づいて分割の割合が決まることが一般的です。
遺留分侵害額請求が発生した場合
被相続人が遺言書で財産を特定の相続人や第三者に大きく偏らせた場合、遺留分(民法第1042条)が問題となります。遺留分とは、法律で保障された相続人の最低限の取り分であり、これも法定相続分を基準に計算されます。
例えば、長男に全財産を相続させるといった遺言書が残されていた場合、他の相続人が遺留分侵害額請求を行い、自身の権利を主張することが可能です。
相続の本質は「話し合い」と「納得」
結局のところ、相続の本質は家族間での合意と納得にあります。法定相続分や遺留分は、家族間での話し合いが不調に終わった場合に備えた「紛争解決のための基準」にすぎません。
財産の分割を巡って争うことを避けるためにも、事前に被相続人が遺言書を作成することや、家族間で率直に話し合いを行うことが重要です。相続は、家族の絆を再確認する機会であり、円満に進める努力が求められます。
まとめ
法定相続分や遺留分は、相続トラブルを解決するための「最後の手段」です。家族の話し合いで合意を形成することができれば、これらの法律は必要ありません。相続の場では、法律に頼る前に、家族間のコミュニケーションを大切にしたいものです。
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